"Balmachan Coat" 24SS Ultimate Collection
毎シーズン、ひとつのアイテムに焦点を当て、素材や縫製、仕様から歴史的背景まで。その全てに拘り抜いたウェアを発表する D.C.WHITE のハイエンドライン "Ultimate Collection"。
'24年春夏コレクションでは、"Balmachan Coat"を発表。その名の通り、英国にルーツを持つバルマカーンコートを深堀りし、全ての要素を再検討。D.C.WHITEらしい塩梅でアイテムを再構築しました。
'24SS ルックブックより
歴史
バルマカーンコートは、スコットランド ハイランド地方にあるバルマカーンという地名が由来という事は良く知られています。
ハイランド地方は自然豊かな山岳地帯が多く、ハイランド牛を主とした畜産業が伝統的
ただ、その出自には不明な点が多いことも事実であり、自然豊かなハイランド地方での狩猟の際に着られたコートがルーツであるとする説、軍用着であったトレンチコートがルーツである説など、様々な説がとなえられています。
軍用コートの生産工場
その後、素材や付属、細やかなディティールなどは変化しつつも、シンプルかつ完成された形から世界中に伝播していきました。
アメリカでは、このコートとそのシルエットが普遍的すぎるあまり、単に"コート"や"トップコート"などと呼ばれているそう。
日本においても、明治44年(1911年)に出版された『東京年中行事 下の巻』という、かつて存在した日刊新聞である萬朝報(よろずちょうほう)の社会面をまとめた書籍の中で"ステンカラーコート"という記述があり、100年以上この国においてもバルマカーンコートが存在している証左となっています。
*ステンカラーコートはバルマカーンコートの和製英語
仕様
前述の通り、様々な地域や文化に溶け込んでいったバルマカーンコートですが、そう呼ばれるための数少ない条件が ①広幅の後ろ中心の襟幅 ②ラグランスリーブ ③比翼仕立て とされています。
"Balmachan Coat" においても、それらの基本的な条件を抑えつつ、そのほかの要素についても奇をてらわずにシンプルかつノーブルな仕様に抑えました。
シルエットは裾広がりなAライン。風になびくテイルがたゆみ幅の広いドレープを生み出します。
袖仕様について、中古市場ではバーバリーのコートなど一枚袖の方が希少価値が高く相場の高くなっていますが、当アイテムではあえて二枚袖仕様に。
パーツがふたつに増えたことにより、肩回りにゆとりを、袖先に向かってややテーパードをかけ、より構築的かつ立体的な袖の形になるようパターンでコントロールできるようになります。
通常、コートの縫製には耐久性を安価に担保するため20番手の太い糸を3cm間に9針通すことが多いですが、"Balmachan Coat"においてはやや細い30番手の意図を3cm間に12針通すことにより、耐久性を保ちつつより繊細な表情のシームに仕上げました。
裏地にはマドラスパターンのコットンクロス、付属として刻印入りの水牛ボタン。いずれもこのコートの為に製作されたオリジナルのものです。
また、素材においては先染め70番双糸のギャバジンクロスを採用。スレン染料を用いて染め上げたことも合わさり、撥水性、防風性、加えて汗や雨による酸化がしにくく色泣きしない性能も持ち合わせます。
実はこの素材、1893年創業の日本の綿織物工場で作られたもの。
明治時代、安価な外国綿糸の大量輸入に危機感を持った明治政府が紡績業のさらなる推進を行うべく、次々に官営工場を設立。
日本の紡績業の発展を後押しした渋沢栄一/画像提供 深谷市
その後、渋沢栄一らの主唱による大阪紡績会社(現・東洋紡)が発した刺激もこの流れを後押しし日本の紡績業が発展し東洋のマンチェスターと呼ばれるまで至りました。
日本の経済発展を底上げした紡績業とその技術力に敬意を払い是非この素材を"Balmachan Coat"に使用したく採用しました。
そんな歴史的経緯を汲む織物会社からサプライされたギャバジンクロスには、表面的な面以上の魅力も織り込まれています。
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拘り抜いた製法の為決して安価とはいえない価格ではありますが、この先長く御愛用頂き大切な人へと受け継いでいくことができる、まさにUltimate Collectionの名に恥じないクオリティとなっております。
是非この機会にお試しください。